岩波少年文庫の『ウサギどんキツネどん』(J.C.ハリス作、八波直則訳)を読みました。このお話は子供時代に読んだきりでしたが、最近急にまた読んでみたくなって探していたら、ちょうど今月復刊されて、うれしい限りです。私がかつて読んだのは岩波少年文庫版ではなかったのですが、この岩波少年文庫のほうは第一刷が1953年とのこと。
知恵の働くウサギどんと、そんなウサギどんを捕らえようとして失敗するキツネどんを中心とする動物たち(人間の友達もいます)のお話です。ウサギどんは、頭の良さで肉食動物に負けないのですが、別に善良なわけではなくて、罪のない者をひどいめにあわせたりと結構ひどいこともします。子供のころ読んだほかの本では、善良な者が勝って悪い者が負ける話のほうが多かったこともあり、当時この作品には特異な印象を受けました。今回、読み返してみたら、物語の聞き手である男の子も、やっぱりそういう展開に納得していないのです。そこを、語り手である黒人のリーマスじいやが世の不条理として説いてくれるところにうならされます。
原文はリーマスじいやのなまりが強くてちょっと読みにくいところがありますが、訳文は読みやすくなっています。
子供のときに読んだ作品を大人になって読み返すのは楽しいものですね。
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