【ワールドSF特集】
南アフリカの作家、ローレン・ビューカスの短篇「ウナティ、毛玉の怪物と闘う」をアップしました。
Zoo Cityの映画化や邦訳で話題になっている作者ですが、本作品は遊び心満載の超ポップなエンターテインメント作品です。
2012年12月31日
2012年12月26日
外国語で書くということ
作業が遅れていますが、アリエット・ドボダールのエッセイ「外国語で書くということ」をアップしました。英語で書くことの意味はまた特集解説でふれますが、じっさいに外国語で書くということに関して、ドボダールのような同じインドヨーロッパ語圏の作家でもかなり苦労していることがおわかりいただけるかと思います。このエッセイ自体が、けっしてすぐれた英語で書かれているわけでもありません。それでもSFを書いていきたい、世界のSFとつながっていたい、という思いがひしひしと伝わってくるので、同じアジア系の人だということもあり、ぼくはこの作家にすごく親近感を抱いています。
マヤ暦はひとまわりして、また新しい時代に入りました。こういう新しい感覚のグローバルな作家が出てくるのはほんとうに楽しみです。近いうちにまた作品もご紹介します。この新しい動きを理解していただく参考にしていただければ幸いです。
小川隆
2012年12月17日
ワールドSF ラヴィ・ティドハー
いろいろあってたいへん遅くなりましたが、ラヴィ・ティドハーの「オレンジ畑の香り」The Smell of Orange Grovesをお届けします。イスラエルの作家ですが、世界中を旅していて、イスラエルという土地やユダヤ人という出自にかならずしもとらわれない作品を書いています。SFというのは本来そういうものだったはずで、そこにぼくはすごく惹かれます。ただ、このシリーズはやはりイスラエルに住んでいる作家ならではのもの。もちろん、世界幻想文学大賞を受賞した長篇Osamaとその関連作品もすばらしいですし、スチームパンク三部作のThe Bookmanも最高なのだけれど、こうして地元を舞台にした作品を書けるようになったのが、作家の成熟だと思います。SFファンにはテーマが微妙で、ファン以外にはアイディアがわかりにくいかもしれないけれど、このスタイルがようやく作者がたどり着いた世界だと思います。お楽しみいただければ幸いです。
小川
2012年12月1日
The Loving Dead
アミリア・ビーマーの2010年のデビュー長篇The Loving Deadのレビューをアップしました。短篇掲載と前後しましたが、併せてお楽しみください。
英米では相変わらずすばらしい小説が書かれているのに、流行がおかしな方向に向かっていっているのが残念です。流行もご紹介しますが、隠れた名作、傑作が数多く生まれているので、流行にとらわれない作品ももっとご紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。
小川隆
2012年11月27日
海賊対ゾンビ
82年生まれのまだ若いSF作家、アミリア・ビーマーの「海賊対ゾンビ」を訳載しました。長篇からのスピンオフ作品ですが、長篇もすばらしく、その雰囲気がよく出ている短篇です。長篇の書評も近日公開です。とてもおもしろい小説なので、ぜひこちらもどこかの出版社さんにお願いして翻訳できたらと思っています。
ちなみに、いま作者は〈ローカス〉を辞め、住所不定で世界各地の友人宅を渡り歩いています。小説執筆と日本の小説の英訳編集をしているので、その打ち合わせを兼ねて、来月初頭までは小川の実家に滞在中です。そうなんです、日本語が話せるんです! なんとか訪日中に写真とインタビューをとろうと思っています。また、それもできたらここでご紹介しようと思いますので、よろしくお願いします。
小川隆
2012年11月6日
シュガーと鶏
ノーダン追悼特集に代表作である「シュガーと鶏」を訳載しました。
作品紹介でもとりあげましたが、シュガー・メクリンの連作はノーダンの代表作であり、またこの短篇は子供から大人まで楽しめる文学として数々のアンソロジーや名作短篇リストにも名前を連ねる名作になっています。ぼくも初めて読んだノーダンの作品がこの短篇でした。ブルーズやロックでも使われるレッド・ルースターという赤茶色の雄鶏の絵柄はその後もノーダンを紹介するときにしばしばイラストで用いられ、ノーダンのイメージと深く結びつくことになったのです。
初出は〈ハーパーズ〉1983年8月号で、表紙は赤く、ちゃんと鶏のイラストも使われています。この漫画っぽいイラストも味わいが深いものでした。ぼくにとっては『蠅の王』以上に印象深い少年小説です。
訳載にあたっては担当編集者のラヴネルさんをはじめ、ご遺族、エージェントなどさまざまな方の暖かいご協力と励ましをいただきました。もう一つ、大人になったシュガーを描く「シュガーとフリークたち」も訳載の予定です。お楽しみいただくと同時に、故人を偲んでいただければ幸いです。
小川隆
2012年9月22日
ワールドSF特集のお知らせ
ワールドSF特集をはじめました。ただ世界の各国SFの紹介を意図しているわけではありません。インターネット時代になって、はじめて世界のSFシーンがつながろうとしているように思います。サイバーパンクのときも世界的に影響は伝わりましたが、そうした英米シーンの伝播という形ではなく、むしろ非英米圏から世界に向けてSFを発表し、交流しようという動きが高まっているのです。そうしたシーンを小説、エッセー、アンケートなどさまざまな形でご紹介していこうと思っています。
まずはアンケートからです。お楽しみいただければ幸いです。
小川隆
2012年9月3日
2012年8月21日
ルイス・ノーダン追悼特集
今年4月に亡くなったアメリカ南部の異色作家、ルイス・ノーダンの追悼特集を組みました。シュールで、音楽的で、ユーモラスで、せつなくて、ともかく大好きな作家でした。小説、エッセイ、作品紹介、作家紹介などオリジナル書き下ろし作品も含む多彩な内容で、日本では知られることなく逝ってしまった偉大な作家を偲びたいと思います。約2か月にわたって毎週内容を更新していく予定です。よろしくおつきあいください。
2012年7月22日
2012年6月17日
シオドラ・ゴス『クリストファー・レイヴン』をアップしました。
スチームパンク特集の一環として、シオドラ・ゴス「クリストファー・レイヴン」をこちらにアップしました。
SFマガジン7月号〈ネオ・スチームパンク特集〉で紹介した、「マッド・サイエンティストの娘たち」の作者、シオドラ・ゴスの短篇です。
SFマガジン7月号〈ネオ・スチームパンク特集〉で紹介した、「マッド・サイエンティストの娘たち」の作者、シオドラ・ゴスの短篇です。
2012年6月7日
2012年6月4日
2012年5月30日
2012年5月28日
ジェイ・レイク『星の鎖』第1回アップ
SFマガジン最新号とタイアップしたスチームパンク特集の一環として
ジェイ・レイク『星の鎖』(志村未帆訳)第1回をこちらにアップしました。
2年前のSFマガジン・スチームパンク特集で掲載された『愚者の連鎖』の続篇です。
4回にわたって掲載していきます。想像力を刺激する作品世界をお楽しみください。
ジェイ・レイク『星の鎖』(志村未帆訳)第1回をこちらにアップしました。
2年前のSFマガジン・スチームパンク特集で掲載された『愚者の連鎖』の続篇です。
4回にわたって掲載していきます。想像力を刺激する作品世界をお楽しみください。
座談会「スチームパンク・ミュージックをめぐって」アップ
SFマガジン最新号「スチームパンク・レヴォリューション」とのタイアップ企画第一弾です。
さる4月15日に、26to50有志でスチームパンク・ミュージックについての座談会を行いました。
参照した動画とあわせて、内容はこちらにアップしています。
皆様からのコメント、お待ちしております!
2012年5月22日
Houghton Mifflin Harcourtが破産
トールキンの一連の作品を出版したり、名編集者シーモア・ローレンスの文芸路線でも定評があり、業績不振でHarcourt Brace Jovanovichと統合してからは、SFっぽい作品も出してきたHarcourtの色も残してスリップストリームっぽいすぐれた作品を刊行してきた老舗のホートン・ミフリン社が破産申告をしたというニュースが入ってきました。
出版社は内外を問わずいま危機的状況にあるのだけれど、さすがにこのクラスの中堅出版社がやっていけないとなると、一気に大手と独立系との二極分化が進みそう。いずれにせよ、これまでの出版のやり方ではもうどこも生き残れないということでしょう。政治に助けてもらうか、読者に助けてもらうか、待ったなしの選択を迫られていると思うのですが、日本の出版社はだいじょうぶでしょうか。
2012年4月26日
訃報
忙しさにかまけていてたいへん悲しいニュースを見落としていました。
ジャンルの内外を問わず、ぼくがいちばん好きな作家の一人、たぶん五指に入るくらい好きで会いに行こうとしたけれど、そのときはもう病気だった南部作家のルイス・ノーダンが先週なくなったそうです。
ぜひ翻訳をしたいと思い、これまでもいろいろな編集者に話してみたのですが、南部の作家というだけで売れないと断られてきました。たしかにアメリカでもどれもせいぜい1万部を超えるぐらいの売れ行きなので、編集者がほれこんでいれば出せないことはないけれど、商売として出版されている作家ではありません。でも、病気でもう執筆が不可能といわれて10年、ずっと闘病生活のなかにいたときに、日本でも紹介してあげられたというお知らせができなかったのが悲しいし、悔しいです。
ご冥福をお祈りします。
小川隆
2012年4月8日
ディック記念賞
晩年のカルトとなった短い時期をのぞいて、生涯ペーパーバック作家として食べられない作家だったフィリップ・K・ディックを記念して、すぐれたペーパーバック書き下ろし作品に与えられるディック記念賞が発表されました。
THE SAMUIL PETROVITCH TRILOGY by Simon Morden (Orbit)
去年伊藤計劃に与えられた特別賞は今年ももうけられ、
THE COMPANY MAN by Robert Jackson Bennett (Orbit)
が受賞しました。
受賞作は日本が滅んだ世界の設定なので、もしかしたら翻訳は読めないのかもしれませんが、いかにもイギリスらしいディストピア小説という印象です。
それにしても、版元のOrbitはすごいですね。このところ新しい出版社の勢いが目立つだけに、老舗の発掘した新人が評価されるのはよいことだと思います。
小川
THE SAMUIL PETROVITCH TRILOGY by Simon Morden (Orbit)
去年伊藤計劃に与えられた特別賞は今年ももうけられ、
THE COMPANY MAN by Robert Jackson Bennett (Orbit)
が受賞しました。
受賞作は日本が滅んだ世界の設定なので、もしかしたら翻訳は読めないのかもしれませんが、いかにもイギリスらしいディストピア小説という印象です。
それにしても、版元のOrbitはすごいですね。このところ新しい出版社の勢いが目立つだけに、老舗の発掘した新人が評価されるのはよいことだと思います。
小川
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