2009年9月24日

9月19日のこと

月に一度の26to50ミーティング。この日も話題は尽きないが、メンバーそれぞれに忙しく、次の作品はまだ掲載する段階に至らず。

ニュースとしては、新メンバー加入?

ところでこの日は新宿でのミーティングだったため、帰りにディスクユニオンとブックファーストに寄った。
ディスクユニオンではピンとくるものがなくてなにも買わず。
ブックファーストではほかのメンバーが大プッシュしていた本と、なにげなく手に取って、最初の1ページの文章のリズムにうまく乗せられた1冊を購入。

リズム、というのは翻訳をする際に大事にしているもののひとつです。リズムが悪い文章は、読んでいてなんだか落ちつかない。
翻訳小説を読んでいるときに、著者や訳者とリズムが合わないと感じたら、なかなか読み進められないことも少なくありません(日本語の小説の場合はそうともかぎらないのが不思議ですが)。
そういうわけで、できるだけ多くの人に読みやすいと思ってもらえる訳文を心がけているしだいです。うまく行っているかどうかは神のみぞ知るといったところでしょうか。


☆今日の獲物
万城目学『鴨川ホルモー』
樋口毅宏『さらば雑司ヶ谷』

★最近読んだ本
仁木英之『僕僕先生』
これっぽっちもストレスを感じずに、楽しくさくさく読めた1冊。メインの登場人物たちが、なんとも憎めず愛おしい。
じつをいうと、仕事で疲れたあとに湯船につかって、もったいないからちょっとずつ読むのがここしばらくの楽しみでした。続編も出ているようなので、彼らの冒険がまだ続くと思うと、それだけで胸が躍ります。

2009年9月6日

アフリカを救え

先週、京都の地球環境研究所で催されたシンポジウムに参加してきた。興味深い話もたくさんあって、やはり学者さんはおもしろい。忘れないうちにいくつか印象に残ったことを書き残しておこう。
おもしろかったのは、国立科学博物館の人類学者篠田博士の話だ。博士は日清カップヌードルのコマーシャル、Dreamシリーズを監修されている方で、アフリカ起源の人類がいかにして世界に拡散していったかを、ミトコンドリアDNA解析をもとに講義してくれた。SFファンとしておもしろかったのは、その人類大移動の動機が、もちろん、夢などではなく、何らかのトラブル、さらには移動を可能とするテクノロジーや気象変動などにあったという話だ。この話はおもしろかったので、次回に詳しく書くつもりだけれど、結論としては、人類がいまやらなければならないことは、われわれ共通の父祖の地であるアフリカを救うことだという。アメリカではオバマ大統領の就任でアフリカ系アメリカ人にまつわる出版物がブームになっているが、大半は公民権運動にまつわるものだ。SFの世界では70年代にマイクル・ビショップの人類学SFが流行したことはあったけれど、マイク・レズニックの『キリンヤガ』シリーズ以外、アフリカをテーマにした話はあまり書かれたことがないように記憶している。アフリカを救う話……読んでみたいものだ。

ブライアン・ジョーンズ

数日前、ブライアン・ジョーンズの死の謎の再調査がおこなわれているという記事を見た。それで思い出したのが、去年アメリカで出版されたザカリー・ラザーという作家のSwayという小説だ。バンド仲間とも恋人のアニタともうまくいかなくなっているブライアンと、新作映画をストーンズを使って撮ろうと考え、なかなかうまくいかずにいる監督のケネス・アンガーと、アンガーの映画に出ることになっていたものの薬におぼれ、やがてチャーリー・マンスンの仲間になって大事件を起こすようになる俳優の3人を主人公に、何もかもが暗闇のなかに向かって落ちていく感じだった60年代の悲劇を描いた作品で、アメリカでは割と評判になったものだ。
でも、ここでぼくが考えさせられたのは、ブライアンのような役割のこと。かつて、バンドには創造性を担当する作曲家(ストーンズの場合はキース)、PR担当でありバンドの顔であるシンガー(同じくミック)のほかに、ジャズやブルーズの伝統をひきずって、バンドをまとめちょっとした味付けを加えてじょうずにバンドをプレゼンテーションするリーダー(バンドマスター)がいた。この最後の役がブライアンで、たとえば「黒く塗れ」でシタールを導入したり、それ自体では当時のほかのバンドと大差ないリチャーズ&ジャガーの曲をじょうずにユニークなサウンドにしあげていた。ビートルズの後期以後、演奏よりレコードを重視するバンドが(レコード産業の要請により)増えたため、その役割はプロデューサーに取って代わられるようになったのだけれど、グループにアイデンティティを与えるこうした役割の人間って重要なのではないだろうか。この小説でも、創造性(映画監督)、チームリーダー(ブライアン)、人気となる顔(俳優)というそれぞれの側面から時代が語られるのだけれど、ブライアンの部分はとりわけ悲しかった。死の真相が究明されたら、こんな小説も翻訳出版できるようになるだろうか。

キャット・ランボー「死んだ女の子の結婚行進曲」

キャット・ランボーの「死んだ女の子の結婚行進曲」をアップしました。本邦未紹介の作家ですが、不思議なイメージをもったおもしろい作家です。ぜひお楽しみください。
またファンタジーか、と思われる方、もう少しお待ちください。本サイトではジャンルにこだわらず、新しい作家、新しい小説を紹介していきたいと思っています。作品へのご感想、コメントはそのままコメント欄に書けるようにしました。ご意見、ご感想をお寄せください。