2009年11月23日

ゼロ年代ベスト

何と表記してよいかわからないのですが、00年代のベストブックを選ぶ企画があちこちでもちあがっています(イギリスではnaughtiesといっています)。
今回ご紹介するのはFantasy Book Criticの書評家Liviu氏の選んだもの。冒頭でもふれられているように、ファンのあいだではsffworld.comのスレッド内でさまざまな推薦がおこなわれています。Liviu氏はここではsuciul名義で投稿しています。デヴィッド・ウェバーが入っているのを意外に思われる方もいるかもしれませんが、夏に来日したパオロ・バチガルピも子供時代から愛読している大好きな作家だといっていました。なお対象は長篇小説のみなので、短編集、アンソロジーは入っていません。翻訳出版が早くなったとはいえ、こうした良書系はまだまだ翻訳刊行が進んでいないのがわかります。ご参考までに。

2009年11月20日

全米図書賞

全米図書賞が発表されました。
小説部門ではコラム・マッキャンのLet the Great World Spinが受賞しましたね。前作『ゾリ』を出版したみすず書房さん、おめでとうございます。こちらも刊行するのでしょうか。内容は最近翻訳が出たフィリップ・プティ『マン・オン・ワイヤー』に描かれているNY世界貿易センタービルのあいだで綱渡りをした話を描いたものですね。それにしても、今年の審査員はすごいメンバーでした。

2009年11月17日

2009年World Fantasy Award発表

10月末ぐらいから、続々とアワード系の発表が続いていますね。
11月2日にはWorld Fantasy Awardが発表されました。

各賞の候補者と受賞者はサイトを見ていただくとして、長編・中編・短編の受賞者だけ抜き出しておきます。

Novel【長編】部門
winner The Shadow Year, Jeffrey Ford (Morrow)
winner Tender Morsels, Margo Lanagan (Allen & Unwin; Knopf)

Novella【中編】部門
winner "If Angels Fight", Richard Bowes (F&SF 2/08)

Short Story【短編】部門
winner "26 Monkeys, Also the Abyss", Kij Johnson (Asimov's 7/08)

長編部門で受賞したジェフリー・フォードは、『白い果実』でも受賞してますね。
(実は26to50サイト開設時にお祝いのメールを送ってくださってるのです。
光栄の至り。…あれ、ひょっとして受賞インタビューなんかもお願いしたら引き受けてくださっちゃったりするのでしょうか?)
さっそく読んでみたいと思います。
しかし、受賞作についてのPublisher's Weeklyの評を読むと、あまりの言われようなので笑ってしまいました。

同じく長編部門受賞のマーゴ・ラナガンは、日本では『ブラックジュース』が河出から出ていますね。 受賞作『Tender Morsels』はハイティーン向けらしいのですが、あらすじやAmazonに入っているコメントなどを読むと、大人が読んでもそこそこパンチがきつい作品なのではという気が。。
でもたぶん自分好みなのでこれもカートに追加。

中編部門受賞のリチャード・ボウズは、今年6月の「SFマガジン」でも短編「都市に空いた穴」(There’s a Hole in the City)が紹介されているので、作風が気になるという方はそちらからチェックされてもいいと思います。

短編部門受賞のキジ・ジョンスンも、「SFマガジン」2008年12月号で短編「<変化(チェンジ)>後の北公園犬集団におけるトリックスター伝承の発展」(The Evolution of Trickster Stories Among the Dogs of North Park After the Change)が紹介されてるみたいですね! これはタイトルだけで釣られてしまう。
この人のデビュー作は日本のおとぎ話をベースにした化かす狐の話、ファンタジー第二作目はやはり日本の平安時代を舞台とし、猫が出てくるようです。
人間と動物の境界を行き来するのが得意なのでしょうか。
…というくだらない推測をしていてもしょうがないので、読みたいなあ、雑誌を取り寄せないといけないのかなあ、と思ったら、本家"Asimov's"サイトでアップされていました。えらい!
"26 Monkeys, Also the Abyss"
(Podcastまでアップされていますね。ダウンロードしてみよう)

ちなみに、26to50の英語サイトでアンケート回答を掲載させていただいているジョン・ケッセルも、惜しくも受賞を逃してしまいましたが、短編部門にノミネートされていました。
アンケートでは、いま取り組んでいるプロジェクトについても回答していただいているので、 是非チェックしてみてください。

2009年10月28日

キャット・ランボー「デュー・ドロップ・コーヒー・ラウンジ」

キャット・ランボーの「デュー・ドロップ・コーヒー・ラウンジ」をアップしました。

現代を舞台にした作品で、先に掲載された「死んだ女の子の結婚行進曲」とはまた違った雰囲気です。どうぞお楽しみください。

本格始動したばかりの作家ですが、それだけに、これからの活躍に期待がかかります。また何かニュースがあれば、ここでお知らせしたいと思います。

 

2009年10月25日

キンドル

キンドルを入手。使い勝手はそれなりによいみたいです。これまでミニノートでPDFやワードのファイルで長篇を読んでいたことを考えれば格段の進歩。しかも、B&Nでヌックという新電子書籍リーダーが発売という発表があったせいか、急遽20ドルのディスカウントまであったので、そこらへんはよかったかも。
ところが、米Amazonのキンドル・タイトルのほとんどがアジアのテリトリーは権利がクリアされておらず、入手不能。たとえば、ジョナサン・リーサムの新刊をはじめ、SF関係はしょーもないシリーズもの以外ほとんどエリア外。文学も同じ、ミステリはまだチェックしていないけれど、たぶん同じでしょう。ファンタシイ、YAもだめですから。また、もうキンドルでしか手に入らない準絶版の品切れ本も2003年刊ぐらいのものでもエリア外。要するに、他社が電子書籍をアメリカ国外でも入手できるようにしているのを警戒して、見切り発車しているだけですね。新刊がすぐ入手できること、古くて入手困難になった本を手に入れられること、など電子書籍のメリットはまだまったくといっていいほどない。もっとも、本の置き場所に困っている上、たくさんの本を持ち歩くことがつらくなっているぼくには、若干重宝するところもあります。軽いですものね。B&NのNookが海外でも入手可能になれば、おいおい権利もクリアされていくだろうと思うし、それが時代の趨勢だと思うのですが、まあしばらくは静観して、値下げを待ったほうがよいかもしれません。
小川

2009年9月24日

9月19日のこと

月に一度の26to50ミーティング。この日も話題は尽きないが、メンバーそれぞれに忙しく、次の作品はまだ掲載する段階に至らず。

ニュースとしては、新メンバー加入?

ところでこの日は新宿でのミーティングだったため、帰りにディスクユニオンとブックファーストに寄った。
ディスクユニオンではピンとくるものがなくてなにも買わず。
ブックファーストではほかのメンバーが大プッシュしていた本と、なにげなく手に取って、最初の1ページの文章のリズムにうまく乗せられた1冊を購入。

リズム、というのは翻訳をする際に大事にしているもののひとつです。リズムが悪い文章は、読んでいてなんだか落ちつかない。
翻訳小説を読んでいるときに、著者や訳者とリズムが合わないと感じたら、なかなか読み進められないことも少なくありません(日本語の小説の場合はそうともかぎらないのが不思議ですが)。
そういうわけで、できるだけ多くの人に読みやすいと思ってもらえる訳文を心がけているしだいです。うまく行っているかどうかは神のみぞ知るといったところでしょうか。


☆今日の獲物
万城目学『鴨川ホルモー』
樋口毅宏『さらば雑司ヶ谷』

★最近読んだ本
仁木英之『僕僕先生』
これっぽっちもストレスを感じずに、楽しくさくさく読めた1冊。メインの登場人物たちが、なんとも憎めず愛おしい。
じつをいうと、仕事で疲れたあとに湯船につかって、もったいないからちょっとずつ読むのがここしばらくの楽しみでした。続編も出ているようなので、彼らの冒険がまだ続くと思うと、それだけで胸が躍ります。

2009年9月6日

アフリカを救え

先週、京都の地球環境研究所で催されたシンポジウムに参加してきた。興味深い話もたくさんあって、やはり学者さんはおもしろい。忘れないうちにいくつか印象に残ったことを書き残しておこう。
おもしろかったのは、国立科学博物館の人類学者篠田博士の話だ。博士は日清カップヌードルのコマーシャル、Dreamシリーズを監修されている方で、アフリカ起源の人類がいかにして世界に拡散していったかを、ミトコンドリアDNA解析をもとに講義してくれた。SFファンとしておもしろかったのは、その人類大移動の動機が、もちろん、夢などではなく、何らかのトラブル、さらには移動を可能とするテクノロジーや気象変動などにあったという話だ。この話はおもしろかったので、次回に詳しく書くつもりだけれど、結論としては、人類がいまやらなければならないことは、われわれ共通の父祖の地であるアフリカを救うことだという。アメリカではオバマ大統領の就任でアフリカ系アメリカ人にまつわる出版物がブームになっているが、大半は公民権運動にまつわるものだ。SFの世界では70年代にマイクル・ビショップの人類学SFが流行したことはあったけれど、マイク・レズニックの『キリンヤガ』シリーズ以外、アフリカをテーマにした話はあまり書かれたことがないように記憶している。アフリカを救う話……読んでみたいものだ。

ブライアン・ジョーンズ

数日前、ブライアン・ジョーンズの死の謎の再調査がおこなわれているという記事を見た。それで思い出したのが、去年アメリカで出版されたザカリー・ラザーという作家のSwayという小説だ。バンド仲間とも恋人のアニタともうまくいかなくなっているブライアンと、新作映画をストーンズを使って撮ろうと考え、なかなかうまくいかずにいる監督のケネス・アンガーと、アンガーの映画に出ることになっていたものの薬におぼれ、やがてチャーリー・マンスンの仲間になって大事件を起こすようになる俳優の3人を主人公に、何もかもが暗闇のなかに向かって落ちていく感じだった60年代の悲劇を描いた作品で、アメリカでは割と評判になったものだ。
でも、ここでぼくが考えさせられたのは、ブライアンのような役割のこと。かつて、バンドには創造性を担当する作曲家(ストーンズの場合はキース)、PR担当でありバンドの顔であるシンガー(同じくミック)のほかに、ジャズやブルーズの伝統をひきずって、バンドをまとめちょっとした味付けを加えてじょうずにバンドをプレゼンテーションするリーダー(バンドマスター)がいた。この最後の役がブライアンで、たとえば「黒く塗れ」でシタールを導入したり、それ自体では当時のほかのバンドと大差ないリチャーズ&ジャガーの曲をじょうずにユニークなサウンドにしあげていた。ビートルズの後期以後、演奏よりレコードを重視するバンドが(レコード産業の要請により)増えたため、その役割はプロデューサーに取って代わられるようになったのだけれど、グループにアイデンティティを与えるこうした役割の人間って重要なのではないだろうか。この小説でも、創造性(映画監督)、チームリーダー(ブライアン)、人気となる顔(俳優)というそれぞれの側面から時代が語られるのだけれど、ブライアンの部分はとりわけ悲しかった。死の真相が究明されたら、こんな小説も翻訳出版できるようになるだろうか。

キャット・ランボー「死んだ女の子の結婚行進曲」

キャット・ランボーの「死んだ女の子の結婚行進曲」をアップしました。本邦未紹介の作家ですが、不思議なイメージをもったおもしろい作家です。ぜひお楽しみください。
またファンタジーか、と思われる方、もう少しお待ちください。本サイトではジャンルにこだわらず、新しい作家、新しい小説を紹介していきたいと思っています。作品へのご感想、コメントはそのままコメント欄に書けるようにしました。ご意見、ご感想をお寄せください。

2009年8月18日

8月15日のこと

26 to 50のミーティングにて、いつものことながらほかのメンバーの読書量に圧倒されて、よい刺激を受けたため、読んだことのない作家の作品をためしてみたくなり、帰りに吉祥寺のK文堂書店に立ち寄ったのだが、小1時間ほどあれこれ物色したあげく、結局手にしたのはもともと好きな作家のハードカバーだった。

保守的になっているのか、なんなのか。

次こそは未読の作家の作品に挑戦したいものです。
おすすめの作家(できたら最近の、日本の)がいたら教えてください。

☆今日の獲物
梨木香歩『f 植物園の巣穴』

2009年7月20日

ベンジャミン・ローゼンバウム「モリーと赤い帽子」掲載

ベンジャミン・ローゼンバウムの「モリーと赤い帽子」("Molly And The Red Hat" by Benjamin Rosenbaum)【訳:小川隆】を掲載しました。
ローゼンバウムは、ファンタジーから本格SFまで、いずれも高い水準の作品をコンスタントに発表し続けている注目の若手作家です。本国ではSFファンだけでない、広い層から支持を受けており、さまざまな賞の候補として推されています。
ぜひ多くの方に読んでいただきたい作家です。

2009年7月6日

日本語版サイトを公開しました

7月10日に英語版のページのみ先行公開していた「26to50」サイトですが、このたびようやく日本語版のページもオープンすることになりました。
日本語版サイトでは、26to50のメンバーが選んだ作品の翻訳をお読みいただけます。
まだ日本で紹介されていない新しい才能を発掘していきますので、どうぞお楽しみに。

こちらのブログの方では、メンバーの活動状況や、ちょっとした一言、コンテンツ更新状況などをお伝えしていく予定です。
#サイトコンテンツへのご意見なども、こちらのブログまでどしどしお寄せください!